すべてが腑に落ちる提案だった。A様夫婦の体験ストーリー
建築家・内山里江氏と描いた、国富の風景に溶け込み、日常を慈しむ「余白」のある家

宮崎県、国富町。穏やかで豊かな緑が風景が広がるこの地に、周囲の自然にそっと寄り添うように佇む一軒の住まいがある。2024年の冬に完成したこの家は、LIXILが主催する国内最大級の住宅施工例コンテスト「LIXIL メンバーズコンテスト 2025」において、栄えある「グッドリビング賞」を受賞した。
施主であるA様夫妻がこの家での暮らしを始めてから、約1年。2023年10月に結婚し、そのわずか数ヶ月後には「2024年中に家を建てる」という情熱的な決意のもとスタートしたプロジェクトは、建築家の内山里江氏とピースホームという最高のパートナーを得て、唯一無二の物語へと結実した。
なぜ、彼らの住まいはこれほどまでに心地よく、そして見る者の心を打つのか。その背景にある、夫妻の想いと建築家との対話を紐解いていく。
本記事目次
■カタログにはない「自分たちの輪郭」を探して
■常識にとらわれない建築家・内山里江氏との邂逅
■風景と建築が溶け合う、国富という舞台
■暮らしが変わる、時間が色づく
■10年後、20年後の風景へ
■カタログにはない「自分たちの輪郭」を探して

「以前住んでいたのは、賃貸の1LDKと実家の2DK。利便性は良かったですが、やはりどこか窮屈で。特に集合住宅特有の『音』の問題は、これから子育てをしていく上での大きな不安要素でした」
そう振り返るのは、ご主人だ。賃貸暮らしの中では、隣人の赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたり、逆に自分たちの声が漏れることにも敏感にならざるを得ない。
「宮崎市内に住んでいた時は特に敏感な方が多かったのか、少し音が響くとすぐに管理会社から注意の紙がポストに届くような環境でした。自分たちのことではないのに、次は我が家ではないかとビクビクする。そんな『暮らしのノイズ』から解放され、子どもがのびのびと泣き、笑い、自分たちの資産として残せる場所を持ちたい。それが、夫妻が家づくりを志した原点でした」
しかし、いざ動き出してみると、理想と現実のギャップに突き当たることになる。2024年の年明け早々、二人は「今年は結婚式も挙げて、家も建てる」という、周囲が驚くようなスピード感を宣言した。

「いくつかの住宅展示場やフェアを回りましたが、どこか手応えがなかったんです」と、奥さんは当時のもどかしさを語る。
「私たちは人生をかけた一世一代の買い物をしようと、震えるような熱意を持って足を運んでいるのに、向こうからはパンフレットを無造作に渡されるだけだったり、『後でメール登録してください』と突き放されたり。私たちの想いを受け止めてくれる『体温』のようなものを感じられませんでした。中には見積もりだけを淡々と提示してくる会社もありましたが、私たちが求めていたのは数字ではなく、共に歩んでくれるパートナーでした」
そんな時、ふと思い出したのが、ご主人の弟が勤めていたピースホームの存在だった。「まずは話だけでも」と訪れた本社で、彼らを待っていたのは、予想外の温かい歓迎だった。
「担当の方が、ひょこっと入り口に出てきて、ニカッと満面の笑みで迎えてくれたんです。その笑顔を見た瞬間に、『あ、ここなら話しやすいかも』と直感しました。営業らしい押し付けがましさが一切なく、ただ私たちの話を丁寧に、興味を寄せながら聞いてくれる。その安心感に、私たちは『ここで家を建てよう』と心を決めたのだと思います」(奥さん)
そこからの決断は、彼ららしい「直感」と「スピード」に満ちていた。「いいと思ったら、それが正解。うんうんと考えるより、信じた道を進みたい」というご主人のスタイルと、ピースホームの誠実さが共鳴し、2024年という激動の1年が動き出した。
■常識にとらわれない建築家・内山里江氏との邂逅

ピースホームとのパートナーシップが決まり、設計を担当することになったのが、建築家・内山里江氏だった。今回は、日本各地で活躍する建築家との家づくりが実現するサービス「design casa」を通じて、A様夫妻と内山氏が出会った形だ。
「内山先生にお会いする前、YouTubeやネットで必死に予習したんです。有名な先生だと聞いていたので、『もし怖い人だったらどうしよう』『私たちの希望が否定されたらどうしよう』と、まるで厳しい試験を受けるような緊張感でした」と笑うご主人。だが、実際の打ち合わせは、これまでの「家づくりの常識」を鮮やかに覆すものだった。
内山氏のヒアリングは、間取りや設備の希望を聞くことからではなく、「どんな理想の暮らしをしたいか」という問いから始まった。

「家事動線や効率の話よりも、『朝起きてから夜寝るまで、どんなふうに過ごしたいですか?』『趣味は何ですか?』という質問がメインでした。私たちは、自然に囲まれて暮らしたいこと、友達とバーベキューを気兼ねなく楽しみたいこと、そして料理を振る舞う時間を大切にしたいこと……。生活の質そのものにフォーカスした対話が続いていきました。私たちの未来の暮らしそのものを見てくださっているようで、それが私たちには新鮮で、とても頼もしかったんです」(ご主人)
土地探しもまた、ご夫婦らしいスタイルだった。
「ハザードマップにかからず、自然が豊かで、でも職場である宮崎市内からも近い。そんな条件で探してもらった時に出会ったのが、ここ国富町の土地でした。実は、契約するまで一度も現地を自分の目で見に行っていなかったんです(笑)。ピースホームさんから提案された時に、Googleマップの衛星写真を見ただけで『あ、ここいいですね、お願いします!』と決めてしまいました。役場も近いし、ここなら大丈夫だろうという根拠のない、でも確信に満ちた決断でした。自分たちで歩いて探していた時には見つからなかった、理想の場所がそこにはありました」
そして迎えた、運命のプレゼンテーション。内山氏は二人にこう告げた。

「まずは、目を閉じてください。私が今から話すことを、頭の中で想像してください」
静まり返った室内で、内山氏がこの家のコンセプト、そしてそこで営まれるであろう日常を物語のように朗読し始める。その言葉を聞きながら、夫妻は風の音や光の差し込み、台所から漂う香りをありありと思い浮かべた。
「目を開けてください」
その言葉とともに差し出されたのは、精巧に作られた模型だった。

「衝撃でした。この土地の変則的な形と予算を考えれば、当然、延床面積を確保するために2階建てになると思っていました。でも、目の前にあったのは、土地の起伏に寄り添うような、美しい平屋の模型だったんです。2階建てが来ると思い込んでいた私たちにとって、平屋は隠れた憧れでした。それを予算の範囲内で、しかもこんなにスタイリッシュに実現できるなんて、魔法を見せられているようでした」(ご主人)
模型の屋根を外すと、そこには二人が語った「理想のワンシーン」が、建築という形で見事に結晶化していた。
「最初に提案されたプランから、ほとんど変更はありませんでした。内山先生が私たちの心の中を覗き込んだのではないかと思うほど、すべてが腑に落ちる提案だったんです」(奥さん)
■風景と建築が溶け合う、国富という舞台

完成した家は、その国富の風景に驚くほど自然に溶け込んでいる。外観の色選びにも、夫妻の個性が反映された。
「ありふれた黒や真っ白は嫌だったんです。かといってショッキングピンクのような奇抜な色も違う。自然の中に溶け合う色がいいなと考えた時、大好きな色である『緑』、それも渋みのあるカーキ色に辿り着きました。私たちはこの色のことを『苔(こけ)色』と呼んでいて、枯葉の色とも、新緑の色とも相性がいい。ピースホームのコーディネーターさんは、私たちのそんなこだわりに対しても、素材や色味を粘り強く探して提案してくれました」(奥さん)
室内に入ると、まず目を奪われるのが、まっすぐな廊下と、その先に広がる贅沢な空間だ。

「建築中の現場に、実はそれほど頻繁には通わなかったんです。逆に妻の両親の方が、私たちの代わりに何度も見に行ってくれていたほどで。完成して初めて中に入った時、『えっ、こんなに広いの?』と驚きました。図面の段階では想像もつかなかった天井の高さと、窓越しに広がる景色の抜け感に、ただ圧倒されました」(ご主人)
「どこに座っても外の景色が見えるんです。洗面台の上にも窓があって、歯を磨きながら今日は雨だなとか、電柱に鳥が止まっていて可愛いなとか。家全体が大きな額縁のようで、毎日違う絵画を見ているような贅沢さがあります。この家に住み始めてから、ふとした瞬間に空を見上げることが増えました」(奥さん)
そして、この家の心臓部となっているのが、ダイニングに鎮座する巨大なL字型のカウンターテーブルである。ご主人は、キッチンを眺めながら次のように話す。

「私は料理を振る舞うのが好きで、キッチンに立つ時間を孤独にしたくなかった。内山先生が提案してくれたこのカウンターは、椅子を並べればすぐに即席のレストランのようになります。実は、アイランドキッチンも検討しましたが、油跳ねや掃除の手間を考えると、内山先生のアドバイス通り壁付けキッチンにして、このカウンターを別で設けるのが正解でした。掃除が本当に楽ですし、キッチンが生活感に支配されないんです」
この広いカウンターは、今では多目的でクリエイティブな場所になっている。

「ここでパンをこねたり、粉をばーっと広げて足踏みをしながらうどんを打ったり。以前の住まいでは考えられなかったことが、今では日常の風景です。内山先生が模型の中に書き込んでくれた椅子の配置通りに座ってみると、本当に会話が弾むんです」(ご主人)
内山氏が提案した「ドアのない子ども部屋」も、夫妻の価値観を形にしたものだ。
「子どもが泣いても笑っても、家全体でその気配を感じていたい。仕切りを最小限にすることで、常に家族がどこかでつながっている感覚があります。子どもがいずれ巣立った後は、また夫婦二人の心地よいワンルームのように使える。時間軸に沿った可変性のある設計に、プロの力量を感じました」(奥さん)
■暮らしが変わる、時間が色づく
2024年12月の入居は、夫妻にとって結婚式を挙げた直後という、人生の最高潮とも言えるタイミングだった。
「結婚式という一大イベントを終えて、そのままこの新しい家に越してきた。生活が180度切り替わった瞬間でした。さらに、同時期に出産と育休も重なり、存分にこの家を味わう時間が与えられたんです」と、奥さんは振り返る。
新居での生活が始まってから、夫妻の時間の使い方は劇的に変化した。
「以前は休日になると、どこかへ出かけないと損をしたような気分になっていましたが、今は家で過ごす時間が一番の贅沢です。国富は市内から少し距離がありますが、その距離すらも、帰宅途中に気持ちを切り替える大切な時間になっています」(ご主人)
子育てにおけるストレスの解消は、言葉では言い尽くせないほど大きいと、奥さんは言う。

「どれだけ泣いても、騒いでも、誰にも迷惑をかけない。外に出ても、隣の家の声すら聞こえないほどの静寂。この『自由』こそが、私たちが求めていた資産だったのだと実感しています。ご近所の方々も本当に温かく、子どもを連れて歩いていると声をかけてくれる。新しい土地に馴染めるか不安もありましたが、今ではこの場所を選んで本当に良かったと思っています」
そして奥さんは、日常の些細な瞬間にも、日々幸せを感じている。
「朝、ゴミ出しに行く時に、足元に広がる草花の朝露がキラキラ光っているのを見るだけで、今日もいい日だなと思える。仕事で疲れ果てて帰ってきた夜でも、車を降りて見上げた夜空がものすごい星空だと、それだけで心が浄化されていく。家という場所が、単なる避難所ではなく、自分を整えてくれる聖域のようになっているんです」
ご主人の料理への向き合い方も変わった。
「食材にこだわるようになり、手の込んだ料理を楽しむようになりました。うどんを一から打つなんて、心と時間に余裕がなければできないことですから。このL字カウンターの上で、子どもが遊んでいる横で料理を作る。そんな何気ない時間が、今の私たちにとっての幸せの定義です」
■10年後、20年後の風景へ
「この家を一言で表すと?」という問いに、夫妻は少し考えた後、「唯一無二の、私たちにしか住めない場所」と答えてくれた。

「自分たちのライフスタイルに完全にカスタマイズされているから、傍から見れば不思議な作りかもしれないけれど、私たちにとってはこれ以上ない最高な場所。10年後、20年後、子どもが大きくなってからも、ここは友人たちが『泊まりに行きたい』と集まってくれるような場所であり続けてほしい。今はまだ整理整頓の途中ですが、少しずつ棚を足したり、自分の好きなものに囲まれるようにアップデートしていくのが楽しみです」(ご主人)
最後に、これから家づくりを考えている人々へのアドバイスを求めると、二人は晴れやかな表情でこう語った。
「ピースホームさんは、一言で言えば『飾らない』工務店です。自分たちをよく見せようと取り繕うのではなく、私たちの理想にどこまでも寄り添い、共に歩んでくれる。だからこそ、まずは直接会って、彼らの笑顔に触れてみてほしいと思います。そうすれば、数字やスペックだけでは語れない、家づくりの本質的な楽しさがわかるはずです」(ご主人)
家を建てるということは、単なる箱を作ることではない。自分たちがどう生きたいかを見つめ直し、その想いを土地と建築に編み込んでいく、人生の再定義のようなプロセスだ。
国富の風に吹かれながら、A様夫妻の物語はこれからも続いていく。この「余白」のある家とともに、より深く、より色鮮やかに。そして、彼らが打ったうどんの湯気が立ち上るダイニングには、今日も笑顔と確かな幸せが溢れている。