愛知淑徳大学・古田教授と語る、真に「住み続けられる家」の構造革新。繰り返す巨大地震に強い住まいと地場工務店の責任 | 宮崎で注文住宅 新築一戸建てを建てる工務店 ピースホーム

愛知淑徳大学・古田教授と語る、真に「住み続けられる家」の構造革新。繰り返す巨大地震に強い住まいと地場工務店の責任

愛知淑徳大学・古田教授と語る、真に「住み続けられる家」の構造革新。繰り返す巨大地震に強い住まいと地場工務店の責任

取材・執筆:田代くるみ / 撮影:青野 寿都
編集:青野 寿都

公開:2026年9月3日

Index

■「建築基準法クリア=安心」の落とし穴 繰り返す揺れから家を守るには
■計算上の数値から「本物の強さ」へ 精密な構造解析と職人の妥協なき施工管理
■施工しやすく、小さな揺れも逃さない 高減衰ゴムと金属ダンパーが叶える理想の制震
■「科学的エビデンス」と「職人の情熱」で地域を守る 地場工務店が果たすべき安心安全の未来

建築基準法が定める耐震基準は、実は命を守るための“最低限のライン”に過ぎません。繰り返す巨大地震から家族の命と住まいを守り抜き、震後も修繕費を抑えて長く安心して住み続けるためには、何が必要なのでしょうか。

本記事では、当社代表の福留が、構造・制震技術の研究者である愛知淑徳大学の古田智基教授、そして制震デバイスの普及を担う株式会社ACLIVEの中屋敷知則社長と実施した鼎談をお届けします。数値だけに頼らない「施工精度」の重要性から、特許技術「ダイナミックファスナー®」の科学的効果、そして地場工務店が果たすべき地域への責任まで、真の「強い家づくり」の裏側を詳しく語り合います。

今回の対談者プロフィール



 
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■「建築基準法クリア=安心」の落とし穴 繰り返す揺れから家を守るには

――現代の家づくりにおいて「建築基準法を守っていれば安心」という考え方がありますが、この法律の本質をどう捉えるべきでしょうか。

古田:建築基準法は、あくまで人命を守るための最低限の基準です。大地震が起きた際に、建物が直ちに倒壊しないことを基本的な考え方としています。ただし、それは繰り返し大きな地震に見舞われた後も、その家にそのまま住み続けられることまで保証するものではありません。

実際、熊本地震をはじめとする近年の大規模地震では、大きな揺れが繰り返し発生することが大きな課題となっています。つまり、1回目の揺れに耐えたとしても、2回目、3回目の揺れまで建物が持ちこたえられることを、建築基準法が保証しているわけではないのです。

福留:法律の第1条に定められた人命保護という思想自体は非常に尊いものです。しかし、実際に家を建てて暮らすお客様の立場からすると、「命さえ助かれば、家が壊れて住めなくなっても良い」とは到底思えないはず。宮崎でも近年、大きな地震が身近に発生しており、揺れの恐怖や防災への意識は年々高まっています。1回の揺れで潰れないだけでなく、その後も修繕費用を抑え、長く安心して暮らし続けられる資産保護の視点が欠かせません。

中屋敷:熊本地震でも、大きな揺れを繰り返し受けることで建物の耐力が奪われ、ダメージが蓄積していくことが問題になりました。家からすれば見えない傷が内部に溜まっている状態です。倒壊を免れたとしても、住み続けるために何百万円もの膨大な修繕費がかかってしまうようでは、その後の家族の生活設計が崩れてしまいます。

古田:自動車で例えるなら、昔の車は「走って止まる」だけで基準を満たしていましたが、現代ではABSなどの安全装置が標準装備になっていますよね。住宅業界における「制震(揺れを抑える技術)」も、これからの時代は標準化されるべき要素なのです。

 

■計算上の数値から「本物の強さ」へ 精密な構造解析と職人の妥協なき施工管理

――一見、耐震等級の数字を上げたり、制震装置を付ければ安心できるようにも思えます。

古田:決してそうではありません。構造壁の壁量を増やせば計算上の数値は高くなりますが、筋交い主体なのか、面材(パネル)主体なのかで挙動は全く異なります。特に最近主流の面材を使ったモノコック構造は剛性を高めやすい一方で、ある程度の変形が進むと釘が浮いてしまい、2回目以降の揺れで急激に耐力が落ちるという弱点があります。設計者が耐震等級などの数値だけではなく、実際にどこまで変形するのかまで把握することが重要なのです。

中屋敷:建物が揺れた際、壁の内部ではビスの抜けや筋交いの折れ、木材のめり込みといった「見えない傷」が発生します。外壁に目立つひび割れがなくても、構造の接合部がダメージを受けていれば耐力は下がります。だからこそ、設計段階で「どこまで変形するか」をシミュレーションし、限界変形角を小さく抑え込む設計手法が重要になります。

福留:当社では、許容応力度計算に基づく耐震等級3を基本に、「制震ユニット MIRAIE」や木造筋かい用接合金物「ブレスターZ」、そして制震技術のダイナミックファスナー®など、それぞれ役割の異なる技術を組み合わせています。単に耐震等級3という数字を満たすことが目的ではなく、「地震に耐える構造」と「揺れによるダメージを抑える仕組み」の両面から、繰り返す大地震にも備えるという考え方です。

そして何より、どれだけ素晴らしい設計図や数値があっても、現場の「施工精度」が伴わなければ意味をなしません。現在の木造住宅はプレカット材が主流のため、職人の技術差が出にくいと思われがちですが、金物の取り付けや面材の留め付け精度には依然として大きな差が出ます。例えば、面材を留める釘打ちひとつをとっても、大工が作業効率を優先してエア釘打機の圧力を上げすぎると、釘の頭が面材にめり込んでしまって所定の保持力が発揮されなくなります。

古田:まさにその通りで、面材の釘のめり込みは構造性能を著しく低下させます。現場でのチェックや教育が徹底されているかが命運を分けるのです。

福留:当社では大工さんに対して、「釘の打込み圧力を少し下げ、最後のわずかな浮きはハンマーで手で叩いて平らに揃えてほしい」とお願いしています。最初は「そんな手間がかかることはできない」と反発もありましたが、「私たちは施主様の人生を守る運命共同体だからこそ、妥協のない家づくりをしよう」と膝を交えて話し合いました。現在では、そうした施工方法が現場の当たり前として定着してきています。

 

■施工しやすく、小さな揺れも逃さない 高減衰ゴムと金属ダンパーが叶える理想の制震

――古田教授が開発された「ダイナミックファスナー®」は、そうした課題をどのように解決するのでしょうか。

古田:阪神・淡路大震災以降、様々な制震デバイスが登場しましたが、従来の制震技術には、ある程度変形してから減衰効果が生じるものもあります。また、装置によっては施工性が課題になるケースもありました。そこで開発したのが、筋交い金物の位置に省スペースで施工でき、小さな揺れから巨大地震まで段階的に追従する「ダイナミックファスナー®」です。

中屋敷:本製品の最大の特長は、「高減衰ゴム」と「金属ダンパー(立体構造のブリッジ部)」を組みあわせた特許技術のツーステージ構造です。震度1〜4程度の微小な揺れには高減衰ゴムが即座に反応して衝撃を吸収し、壁や断熱材のズレを防ぎます。そして震度5〜7の巨大地震に対しては、12mm厚の高強度金属ダンパーが強力に抵抗し、建物の変形を抑制します。小地震から大地震、さらには長周期・短周期のあらゆる地震波に対してトップクラスの低減効果(揺れ幅最大95%低減)を発揮します。

福留:工務店の現場目線から言っても、ダイナミックファスナー®は非常に洗練されたプロダクトです。大型の制震ダンパーは納まりの制限が多く、施工コストも嵩みますが、この製品は小型で従来の筋交い金物とほぼ同等の感覚で施工できます。大工さんに過度な負担をかけることなく、建物全体に点在させて配置できるため、日常生活の微小な揺れの蓄積から巨大地震までバランスよく家を守ることができるのです。

中屋敷:さらにピースホーム様では、建物ごとに3D地震応答解析シミュレーション(YURENA)の実施が可能ですよね。許容応力度計算による耐震等級3の強固な構造にダイナミックファスナー®を組み合わせることで、シミュレーション上、想定する大地震を繰り返し受けた場合の倒壊リスクや損傷度まで確認し、建物ごとの性能を可視化できます。ここまで解析を行えること自体、住宅性能を考える上で非常に大きな意味があると思います。

 

■「科学的エビデンス」と「職人の情熱」で地域を守る 地場工務店が果たすべき安心安全の未来

――科学的な裏付けを持った住まいづくりは、今後の地域社会にどのような変化をもたらすでしょうか。

中屋敷:これからの時代、お施主様もインターネットやAIを活用して構造や耐震性について深く勉強されています。単に「大手メーカーだから安心」「強そうな装置が付いているから大丈夫」という感覚的な説明ではなく、許容応力度計算や地震応答解析といった定量的データを示し、明確な根拠を持って安心を提供できる工務店様こそが選ばれる時代になっていくはずです。

古田:構造補強も、高額になりすぎれば普及しません。住宅設備との予算配分もある中で、いかに低コストで標準化できるかが重要です。ダイナミックファスナー®のように、合理的かつ手頃なコストで高い性能を標準装備化できれば、地域全体の住まいの耐震アベレージは一気に引き上がります。日本において新築戸建ての大部分を担っているのは地域のビルダーや工務店さんです。だからこそ、ピースホームさんのような存在が科学的エビデンスを武器に本物の家を普及させることが、地域の防災力を高める一番の近道なのです。

福留:私たち工務店の原点は、いつの時代も「お施主様が長く安心して暮らせる良い家をつくること」にあります。どれだけ時代が変わり、資材高騰などで社会環境が厳しくなっても、ここだけは絶対にぶらしてはならない軸です。科学的なエビデンスを取り入れつつ、現場の職人たちとワンチームで施工精度を磨き続ける。本物の構造性能と施工の情熱を兼ね備えた住まいを地域に増やしていくことこそが、地場工務店としての最大の責任であり、未来への貢献だと考えています。