快適な住まいは窓づくりから。脱炭素社会に向けた新たな省エネ基準について
快適な住まいは窓づくりから。脱炭素社会に向けた新たな省エネ基準について
- 現場レポート
- 断熱対策
- カーボンニュートラル
取材・執筆:青野 寿都 / 撮影:青野 寿都
編集:有住 裕里
公開:2024年4月29日
Index
暑さの7割、寒さの5割は窓が原因
脱炭素社会に向けた新たな省エネ基準 HEAT20 G2・G3
高い断熱性能を実現する窓の進化と断熱対策
断熱性能を上げることで得られる快適な暮らしとは?
2024年2月26日、熊本にあるYKK P-STAGE八代 、LIXIL有明ラボのショールームならびに工場を訪れた。ピースホームが掲げるビジョン『Smile for Life. Making Good Community.』 の実現のため、最新の窓テクノロジーの進化と断熱性能について、そしてこれからの快適な住まいについて各社様にお話を伺った。本記事では、その内容の一部を抜粋してお届けする。

暑さの7割、寒さの5割は窓が原因

各社様がご提供している窓製品ですが、どのような考えのもと製品を造られているのでしょうか?また、現在の住宅断熱についてどのようにお考えでしょうか?
各社様
快適な家づくりは「窓」づくりからだと考えています。これからの家づくりの必須要件は、窓やドアなど「開口部」の性能向上です。実は、住宅の中で最も熱の出入りが多いのが窓やドアなどの「開口部」になります。夏場の場合、窓から家の中に入ってくる熱流入率は74%を占め、冬場の場合、室内の熱が外に流出する熱の割合は50%を占めます。これからの省エネ基準・断熱等級への対応はもちろん、より健康・快適・省エネな住まいづくりには、高性能な窓・ドアを選択することが重要になってきます。

【算出条件 】解析No:00033
●使用ソフト:AE-Sim / Heat(建築の温熱環境シュミレーションプログラム)/(株)建築環境ソリューションズ
●気象データ:「拡張アメダス気象データ」2010年版標準年/(一社)日本建築学会
●住宅モデル:2階建て/延床面積120.08㎡/開口部面積32.2㎡(4~8地域)「平成25年省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び開設Ⅱ 住宅」標準住戸のプラン
●躯体:平成28年 省エネルギー基準レベル相当 ●窓種:アルミサッシ(複層ガラス(A8未満))
YKK様資料参照

坂元 (株式会社ピースホーム 新築アドバイザー)
住宅において、最も熱が逃げていく箇所が窓であることは知っていました。しかし、具体的な数値を知ったのは初めてです。こんなにも窓から熱が流入出しているとは…。ピースホームでは、なるべく窓を増やさないように配慮しています。必要な個所に必要な数の窓を設置することで、断熱性能を高めるためです。これからは窓の性能を高めること、そして『窓の数』への配慮もとても重要になってきますね。
脱炭素社会に向けた新たな省エネ基準 HEAT20 G2・G3

YKK 工場生産ライン視察
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、日本の省エネ政策が加速しています。私たち住宅会社も断熱性能についてもっと追求していかなければなりません。現在の日本の状況と断熱等級について詳しく教えて下さい。
各社様
仰る通り、脱炭素社会に向け国が本格的に動き出しています。今、世界中でエネルギー獲得競争が激しくなり、日本の暮らしにもさまざまな悪影響が予測されています。その一つが、電気代やガス代の高騰です。今後も増え続ける傾向にあると予測されており、高騰がさらに進むことで、暑い日・寒い日でも冷暖房を満足に使用できない家が増えてしまうことが考えられます。中でも、一段と高温化が進む夏の気温は、私たちにとって無視できない環境変化の一つです。断熱性能の高い設備を検討することは、高温化が進む真夏の中でも快適かつ経済的に毎日を過ごす第一歩となります。

各社様
現在、温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」を、2050年までに達成すると国が宣言しました。2022年には23年ぶりにこれまで最上級だった「断熱性能等級4」を超える上位等級が新設されました。等級5から等級7まで、一気に3つの等級が増え、これまでの最上位であった「等級4」は、2025年にはすべての新築住宅に義務付けられる「最低基準」となることが決まっています。2030年には、さらにワンランク上の「等級5」を義務化する議論も進められています。そして、断熱性能等級6以上を実現するのに必要不可欠となるのが、窓の高性能化です。断熱等級7を実現するにはペアガラス窓では取得が厳しいと予想しており、トリプルガラス窓も視野に入れていかなければなりません。また、断熱性能が高い住宅ならではのローンや補助金などの優遇制度もチェックしておく必要があります。

青野 (株式会社ピースホーム 広報部)
ピースホームの新しいビジョン「Smile for Life. Making Good Community.」は、「家族がずっと笑って暮らせる住まいを創る」、「地域で一番幸福度の高いコミュニティーの創造」という想いが込められています。そして、このビジョンを実現するためには住まいの快適さはもちろんですが、地球環境にも配慮した家を造ることが非常に重要だと考えています。いくら良い家を造ったとしても環境問題を無視してしまうと、将来的に家族がずっと笑って暮らすことはできなくなるでしょう。お客様が快適かつ、無理なく暮らせるコストパフォーマンスの高い住宅を造り、さらには環境負荷の少ない住まいを造っていくことが求められていると感じています。また、ビジョン実現のため、代表取締役の福留が「モノづくりの原点回帰」というテーマを表明しました。私たちの掲げるビジョンの実現が、脱炭素社会の実現にもなるという使命感を持ってモノづくりに真剣に向き合っていきたいと思います。
高い断熱性能を実現する窓の進化と断熱対策

長友 (株式会社ピースホーム新築アドバイザー)
断熱等級5・6・7を実現する上で、窓の高性能化は必要不可欠ですね。最新テクノロジーの窓を体感させていただき、サーモグラフィーで具体的な数値も把握することができました。従来の窓と比較して、最新の窓は冷暖房をつけなくても約2~3℃も差がある。これはとても大きな差になります。冷暖房をつける場合でも、小さな温度設定で快適な暮らしを実現することができるからです。また、断熱等級4と断熱等級6では、年間冷暖房費が約20,000円以上の差につながります。しかしながら、窓を高性能化しても窓の数が多ければ、その分断熱効果が低くなるのは事実。最新のテクノロジーを最大限活かすためには、窓・玄関・屋根・外壁・床など、家づくりを総合的に理解していなければ意味がありません。単純に性能が良いものを採用すればよいというわけではないと考えています。総合的に理解することができれば、顧客のニーズに応えるコストパフォーマンスの高い快適な住まいを造ることができます。

断熱性能を上げることで得られる快適な暮らしとは?

住宅の断熱性能を上げることでエネルギー消費の削減に繋がり、電気代の節約・CO2削減に大きく貢献することが理解できました。その他に、どのようなメリットがあるのでしょうか?
各社様
一つは、結露防止です。実は、結露からどのような被害が起こるかをご存じの方は多くありません。結露が発生すると、カビが発生します。カビが発生すると、カビを食べるダニが発生します。カビの胞子とダニのふんを吸い込むことで、アレルギーの原因につながり、健康に悪影響を及ぼします。また、ヒートショックも忘れてはいけません。冬季に多く発生するヒートショックは、室内の温度差による血圧変動が原因で、心筋梗塞や脳卒中などを起こします。ヒートショックに関連した入浴中の死亡は、交通事故死亡者数の約4倍もあります。特に高齢者が多いのですが、若年層の方も将来的には避けては通れないリスクです。暑い夏の日は、熱中症も多く発生しています。このような多くの健康被害を、断熱性能を上げることで防ぐことができるのです。

中原 (株式会社ピースホーム 新築アドバイザー)
「家族がずっと笑って暮らせる住まいを創る」、このビジョンを実現するためには、住む人の健康被害を防ぐ快適な住まいを造る必要があります。実際に自らが体感することで、断熱 = 窓の重要性を深く理解できました。ピースホームでは、断熱等級5を下回ることはほとんどありませんが、現在の標準仕様の見直しも行いさらに快適で環境負荷の少ない住宅を提供できるように商品に磨きをかけていきたいと思います。また、長友も話したように、ただ性能を上げるだけでなく、家づくりを総合的に理解しコスト面にコミットすることで、より多くのお客様に環境負荷の少ないお家・快適で暮らしやすいお家をご提供できると考えています。その結果が、未来の子供たちが暮らす地球を守ることにつながっていくのだと思います。